光延 一郎(イエズス会社会司牧センター所長)

  ソウルの日本大使館前での、日本軍「慰安婦」とされた婦人たちによる毎週水曜日の抗議行動がついに千回(つまり二十年)を越えました。年老いたハルモニたちの「恨」を放置してはおけないと、韓国政府も日本政府に対しこの女性たちへの誠意ある応答を求めましたが、日本政府は「すでに決着済み」と無視を決め込んでいます。
  日本国内でも、朝鮮学校が高校授業料無償化から外され、さらに東京や大阪では知事の意向により、長らく続いてきた朝鮮学校への補助金が凍結・削減されています。「朝鮮」籍を選んでいる人々へのいやがらせやバッシングは目に余ります。
  日本が求められているのは、受けた「非人道的」な扱いについて「人間としての尊厳」を回復させる正当な謝罪と補償をせよということに尽きます。これに向き合い、政治や教育においてその実を示すことは、日本の社会自体のためにも良いことでしょう。まずは、歴史をまっすぐに見つめる目を養いたいものです。

中塚明『これだけは知っておきたい日本と韓国・朝鮮の歴史』(高文研、2002年)
佐藤大介『観光コースでないソウル』(高文研、2012年)
徐勝・前田朗編『文明と野蛮を超えて―わたしたちの東アジア歴史・人権・平和宣言』(かもがわ出版、2011年)
小森陽一・崔元植・朴裕河・金哲編著『東アジア歴史論争のメタヒストリー』(青弓社、2008年)
国立歴史民族博物館・趙景達・宮崎博史・李成市・和田春樹編『韓国併合100年を問う』(岩波書店、2011年)
金賛汀著『韓国併合百年と「在日」』(新潮選書、2010年)
李泰鎮著『東大生に語った韓国史――韓国植民地支配の合法性を問う』(明石書店、2006年)
韓洪九著『たおれゆく韓国』(朝日新聞、2010年)
金恩正他著『東学農民革命100年――革命の野火、その黄土の道の歴史を尋ねて』(つぶて書房、2007年)
趙景達著『植民地朝鮮――その現実と解放への道』(東京堂出版、2011年)