有吉 和子

カトリック労働者運動 (ACO) 北九州・関門地区会員

 

 

必要なのはただ、純粋に、単純に、民になりたいという望み、……不断に根気強く働きたいという、無欲な望みです。

(教皇フランシスコ、回勅『兄弟の皆さん』77)

 

私は、社会の中で、人との関わりを大切にして、主に導かれ生かされたいと願い歩んでいます。核兵器の廃絶と脱原発社会を求め、日本カトリック正義と平和協議会「平和のための脱核部会」に加入し、繋がっています。また、外国人技能実習生や留学生の相談を受ける活動や、長崎県の大村入国管理センター収容者との面会活動を続けています。ネットワ-クの中で繋がって、一つの小さな歯車として働くことができることを喜びのうちに体験しています。活動を通して、「何よりも大切なのは一人の人間の命、人間の尊厳」と強く感じます。

 

ACOの会員として

私は、ACO(通称アセオ:カトリック労働者運動)の会員です。アセオは人間が大切にされる新しい社会を目指して、日本全国7地区の仲間と繋がって歩み、世界キリスト労働者運動(WMCW)に加盟し、世界とも連帯しています。世界キリスト労働者運動(WMCW)は、世界中のキリスト者の労働者運動で構成された国際運動です。社会的、経済的、文化的に生活条件を改善し、人間の尊厳を求めて、福音に基づき、国際的に連帯して使徒的活動を続けています。

アセオでは、毎月の例会で行う「生活の見直し」の分かち合いを大切にしています。この分かち合いを通して、私たちアセオ会員は、互いの生活のどこに主の福音があるかを探し、主キリストに繋がって、互いに愛し合って歩むことを大切にしています。優しさと愛情のうちに表わされる充実した生活を送るため、会員が互いに尊敬して支え合うことを大切にしています。

ある時、「アセオの基本は、単なる活動ではなく、主イエス・キリストに立ち返り、キリストに繋がって動くことです。何を大切に生きるか、本当に目指すものを探す『生き方の見直し』は大切です。皆さんの『生活の見直し』は、神様を愛し、会員同士が互いに愛し合い、生き方を支え合うためのものです」と話されたアセオ担当司祭のメッセージが心に響き、今も私の心の奥深いところで大切にしています。

現在、私は全国アセオの国際担当として働いています。アセオ各地区の国際担当者の方々との連絡、メールでの国際関係についてのやり取りにおいても、互いを大切にして、連帯してその役割を担い歩めることを感謝しています。

コロナによるパンデミックは世界共通の問題で、その影響をWMCWからの情報を通しても再確認します。世界のそれぞれの地域で弱い立場に置かれている人々のコロナ禍による状況を知ることができました。そして、日本からもコロナ禍の日本社会の現実を世界に発信して共有しています。国際的にも連帯して、見て、判断し、「生命最優先の社会正義」を求め、実行に向かうため活動しています。

 

日本で働く外国人技能実習生

技能実習生問題については、外国人技能実習生権利ネットワークの会員となり、実習生からの相談を受けて、彼ら一人一人の人間の尊厳を取り戻すために、労働組合ユニオン北九州の仲間と協力して活動を続けています。学ぶことも多いです。現在の取り組みの多くは、ベトナム人技能実習生からの相談です。相談のほとんどが、残業代の未払い、労災隠し、暴力、強制帰国、劣悪な労働環境や生活環境、そして解雇問題です。最近は妊娠、出産問題の相談も増えています。

多くの実習生は人間としての尊厳を大切にされず、即戦力として、安価な労働力として、まるでただの機械のように扱われています。本来、来日前の研修で日本語を学んでくることになっていますが、彼らのほとんどは3年間の実習後も、日本語を理解することが難しいです。日本語をはじめ、実習に必要な教育もなされないまま来日します。彼らは日本に来てからもきちんと研修を受けることなく、多くの会社はベトナム語の通訳がいない状態で彼らを受け入れています。

実習生に対する暴言や暴力の問題は、言葉が通じないために彼らにイラつくことも原因の一つだと感じます。コロナ禍のパンデミックが続く中、小さい立場に置かれたベトナム人技能実習生の身体的、精神的痛みの相談は続いています。

以前、大村入管にも元ベトナム人技能実習生の収容者がいました。面会の際に通訳をしてくれていたベトナム人シスターが、「ベトナムでは、『日本は労働条件も良く給料も高い。ぜひ日本で働きましょう』と宣伝されています。悪質なブローカーによって多額の借金を背負い、日本にやってくる若者が多いです。彼らは被害者です」と話してくれたことがありました。

実際に面会した元ベトナム人技能実習生の収容者のうちの1人は、親にたくさん借金をさせて来日しましたが、低い賃金で働き、重労働に耐えられず失踪し、最終的にオーバーステイで入管に収容、その後強制帰国させられました。「親に苦労をかけました。申し訳なく、悔やんでいます。このままでは帰れません」と涙ながらに話してくれた姿を忘れられません。

すでに多民族・多文化化している日本社会にあって、これからより一層人権が守られ、人間の尊厳が大切にされることの必要性を改めて確認します。

 

大村入管面会活動を通しての喜びと希望

私がはじめて大村入管での面会に行くようになってから7年半になります。長崎教区の信者の方と情報を交換し、長崎インタ-ナショナル教会の柚之原牧師、長崎教会管区難民移住移動者委員会担当司祭の川口神父とも繋がり、面会活動をしています。2年半前からは、イエズス会の村岡ブラザ-と共に、その後、1年前からは同じくイエズス会の中井神父と共に面会を続けています。

今年3月1日、多くの方の協力により、6年以上大村入管に収容されていたベトナム人、グェン・バン・フンさんに在留特別許可が下りました。ボートピ-プルとして1989年に日本に来たフンさんはカトリック信者で、私が彼に面会をするようになって3年近くになります。

2月末、フンさんの特別許可の情願の署名について川口神父から連絡をもらいました。署名の呼びかけ人は柚之原牧師です。2019年に大村入管で餓死したナイジェリア人収容者の方とも1年近く面会を続けていた私は、あの時の辛さをもう繰り返したくないという強い思いから、関わりのあるあらゆる団体のネットワークを通して緊急署名をお願いしました。福岡教区信徒使徒職協議会、アセオ、外国人技能実習生権利ネットワーク、ベトナム人技能実習生ホットライン、そして在日ベトナム人の友人等、多くの方が賛同し、署名してくれました。

在留特別許可が下り、仕事もできることになったフンさんは、柚之原牧師が引受人となり、大村で生活を始めています。4月中旬に会った際、収容所のアクリル板越しではなく、直接会って話をすることができるのが夢のようで、胸がいっぱいになりました。彼は毎日朝ミサに参加しているそうです。6月9日には甲状腺の手術を受け、健康を取り戻し元気に生活しています。大村入管面会に行ったときはフンさんにも会うようにしています。一人の人間として生かされる喜びを分かち合ってくれるフンさんの様子を嬉しく思い、主に感謝です。

 

教会内だけでなく、教会を超えて社会と繋がり、人間の尊厳を求めて、出会いと交わりに感謝して、祈りのうちに歩みたいと願います。