http://www.nhk.or.jp/special/onair/101204.html
今回もまた、NHKスペシャルの番組の紹介です。最近のNHKはなかなか意欲的なドキュメンタリーを作っているな、と感心しています。
今回紹介するのは、「日米安保50年」。2010年12月4日から11日にかけて、4回シリーズで放映されました。1960年(私の生まれた年です!) に日米安全保障条約が結ばれて50年目を迎え、日米安保体制の成り立ちを振り返って、今後の安全保障政策のあり方を考える番組です。今、この番組が重要な のは、ご存じのように沖縄の米軍基地移転が重要な外交問題となり、鳩山政権が倒れた大きな原因とさえなっているからです。
沖縄県民の多くが、米軍基地の74%が沖縄に集中する現状を非難し、米軍基地の県外・国外移設を訴える一方で、国民(といっても、沖縄以外の「本土」住 民ですが)の多くが、「日米安保体制を堅持するためには、沖縄の米軍基地は必要悪だ」と考えているねじれた現実。なぜ、沖縄に米軍基地が集中するように なったのか。そもそも、なぜ日米安保条約は必要なのか。50年もの間、一言一句として変えられなかった日米安保条約は、これからもそのままでよいのか。こ うした基本的な問題を、さまざまな当事者からの取材を通じて、浮き彫りにします。
そもそも、1960年の日米安保条約改定の時には、日本国内で大きな反対運動が起きました。そのあまりの激しさに、アメリカ側は、10年後の再改定の時に は、安保条約は破棄されるのではないかと、危機感を募らせました。日本政府との協議の結果、アメリカがとった政策は、自衛隊との共同演習などによって米軍 の影を薄める「米軍隠し」と、日本政府の「非核三原則」(核を持たない、作らない、持ち込ませない)に関して、核兵器の日本持ち込みについては一切説明せ ずに、実際には持ち込むという「核慣らし」でした(第1回 隠された米軍)。
次に、なぜ米軍基地は沖縄に集中しているのか。実はもともと、米軍基地は本土の方が多かったのです。それが、沖縄に移っていったのはなぜか。従来は「沖縄 の地理的重要性」が理由とされてきましたが、関係者の証言から、「本土の基地を減らして国民の反感を和らげるために、米軍の施政下にあり基地をつくりやすい沖縄に移した」というのが真相に近いことが分かりました。“基地容認派”と呼ばれる人たちも、米軍の圧力や日本政府の経済振興策によって、基地受け入れを余儀なくされてきた経緯を証言します(第2回 沖縄“平和”の代償)。
50年の間に、日米安保体制の意味は根本的に変わっています。基地を貸すだけから、自衛隊と米軍の防衛協力へ。その範囲も、極東アジアから世界へと広が りました(自衛隊のイラク派遣)。日米安保体制はいつしか「同盟関係」と呼ばれるようになりました。こうした安保体制の変質は、日米両国の外務・防衛官僚 同士の交渉で、秘密裏に進められてきました(第3回 “同盟”への道)。
今、世界情勢は50年前とは決定的に変わっています。東西の冷戦は遠い過去のものとなった一方、尖閣諸島や北方領土、北朝鮮問題など、東アジアの安全保 障は大きく揺れています。日米安保体制の本質とは何なのか。巨大な隣国・中国との関係はどうすればよいのか。日本独自の外交の軸は、どこに置くべきなの か。日本国憲法が定める平和の理念を、私たちはどのように実現していけるのか。専門家の議論は必ずしも一致しません(第4回 日本の未来をどう守るの か)。少なくとも私たちは、日米安保体制を動かせない前提とするのを止め、もう一度、日本の平和と安全について、自分の頭で考える必要があるでしょう。 (番組のDVDはセンターにあります。貸し出しご希望の方はお問い合わせ下さい)
【 社会司牧センター柴田幸範 】