フィリップ・アマラル(ブリュッセル)
私は毎日、勤務時間の大部分をコンピュータの前で過ごしている。これは不満ではなく、事実を述べているに過ぎない。私はJRSヨーロッパの政策・啓発担 当として、人々と接するよりも、調査研究や政策の仕事に力を注いでいる。もちろん、仕事の一環として政策担当者と会うこともある。だが、人と会ってばかり いたら他の仕事ができなくなる。だからコンピュータの前に座っていなければならない。
私は専門訓練を受けたソーシャル・ワーカーだ。JRSに入る前、深刻な慢性の精神疾患を抱えた人々を相手に働いていた。その頃、私はよく「静かな事務仕 事ができたら素敵だろうな」と自問自答したものだ。そして、割と静かな事務仕事をしている今、「どうして一日中、コンピュータの前に座っていなきゃならい ないんだろう」とつぶやいている。
二つの大事なことを学んだ。第一に、誰でも人生で果たさなければならない役目があるということ。第二に、その役目を探している最中なら、どんな役目にも意味があるということ。
JRSヨーロッパは去年、欧州議会であるイベントを開いた。3人の難民を呼んで、欧州議会の議員たちに会わせたのだ。2人は女性だったが、ヨーロッパで の難民体験を5分ずつ証言してくれた。そのうち1人は、難民として庇護を受けるまで12ヶ月も収容所に入れられた。もう1人は、生活できるようになるまで 何ヶ月も極貧にあえいでいた。2人ともはっきりと情熱的に、品格と勇気をもって話して、出席者全員を惹きつけた。彼女らは、私たちNGOスタッフよりも上 手に自分たちのことを語った。私の役目は、彼女らを議員たちと一緒の部屋に招くことだけだ。あとは彼女らがやってくれる。
私は今、拘留されている政治亡命者と非正規移民のレポートを書いている。このレポートは、EU21ヵ国の収容者685人への一対一のインタビューに基づ いている。私はこのプロジェクトを企画し、データを分析し、レポートを書いたが、自分では1人もインタビューしていない。ただ、コンピュータ画面で読んで いるだけだ。だが、このインタビューはどれも大きな意味を持っている。どのケースにも名前と物語と胸しめつける人生がある。私の役目は彼らの言葉を文書に して、収容政策の担当者に読ませることだ。後は彼らが語ってくれる。
【エコロジー特別委員会の設置】
イエズス会社会正義エコロジー事務局は、総長の許可のもと、第35総会第3教令の「被造界と人間との契約関係をより深く理解するように」(36)という勧 告を実践するため、特別委員会を設置した。この委員会は、環境への配慮がどのように「神への信仰と愛の核心に触れる」(第3教令、32)のかを考察し、回 勅『真理に基づいた愛』(Caritas in Veritate)の第4章をこのテーマにあてた教皇ベネディクト16世の指導に従う。教皇は『平和を築くことを望むなら、被造物を守りなさい』と題した 2010年世界平和の日メッセージ(1月1日)で、環境を守り尊重することの重要性を指摘している。
今こそ、私たちイエズス会の伝統を「現代化」(aggiornamento)する好機だ。社会正義事務局は10年前、第34総会第20教令に応えて、 『壊れた世界に生きるわたしたち-エコロジーに関する考察』を発表した。社会正義事務局は注意深く「時のしるし」を読み、気候変動や天然鉱物資源の不適切 な利用などの緊急な環境問題を指摘している。そこから、イエズス会が独自に貢献できることは何かを識別して、この問題に取り組むことが求められている。
委員会はコロンビア、ザンビア、スペイン、フィリピン、インドの5人のイエズス会員と、米国の1人の信徒からなる。社会正義・エコロジー担当秘書と教育担当秘書が共同で委員長をつとめる。
委員会の任務は、実践的な勧告を内容とする報告を早急に作成することだ。報告には二つのレベルがある。一つは、エコロジーへの関心をイエズス会のあらゆ る役務の「一側面」とするための具体的な方法の提案であり、もう一つは、役務の垣根を越えた具体的なプロジェクトの提案だ。イエズス会が力を発揮できるグ ローバルで国際的な分野と方法論を見出すことに重点が置かれる。総長は、委員会がこの方向で任務を遂行するよう望んでいる。[2010年5月]