フランシス ムンス パクSJ(イエズス会人権連帯研究センター所長)
現在、韓国管区は、社会司牧活動の3つの方面を中心にして、エネルギーと人材を注いでいる。それは、【1】ギェオンキ州のキンポ市において種々のサービス、共同体作りと外国人移民労働者のためのアドボカシー(イエズス会員3人と専任協働者1人)、【2】ソウル郊外における統合された社会司牧活動(イエズス会員2人と専任協働者5人)、【3】済州島に計画中の海軍基地建設反対運動への参加(かなりの時間活動するイエズス会員4人と協力するイエズス会員数人)である。
【1】キンポ イウトサリ(外国人移民労働者センター)
イウトサリは「隣人として生きる」という意味である。このセンターにおいて、カウンセリングサービス、韓国語クラス、そして文化的ならびに宗教的イベン トを通して、それぞれの国のグループの共同体作りの支援をしている。キム チョン-デ神父は、センターの代表者で、シンデユンさんはセンターのマネー ジャーである。また二人の神学生が、そこで中間期生として活動している。
昨年秋に、センターのマネージャーはサバティカル期間を利用して、タイに行って、彼女が知っていた元外国人移民労働者を訪問した。彼女は、韓国に最も多 くの外国人労働者が来るタイのウドンタニから、次のように手紙を書いてきた。「サラネ家族の両親は、息子をタイの祖母に預けて、韓国に働きに行った。6年 後に戻ったときに、息子は両親になつかず、両親の言うことを聞かなくなっていた。お互いの関係を取り戻すのに、半年もかかった。もしまた外国に行くなら ば、両親の一人だけが行くと言っている。私はこの旅によって、私たち韓国人は、この人々を『外国人移民労働者』としてではなく、子どもたちの教育費を稼ぐ ために来ている『親』として考えるべきであると気づいた。そうなれば、彼らが侮辱を受けたり、賃金未払いになったりすることは少なくなるだろう。」
シンデユンさん、韓国で働いていた人の家族と、タイで
【2】ムハクドン(統合された社会司牧活動)
ソウルの貧しい地域だったところでは、政府の計画によって、ほとんどすべての貧しい人々が立ち退かされた。現 在、最も社会的な問題は、非常に鮮明になった貧富の格差によるものである。これは、子どもや若者たちに大変厳しい状況である。イエズス会はこの地域で、貧 しい人々の司牧のために、ソウル大司教区に属している小教区の責任を任せられている。そして、小中高の生徒のための地域センターもイエズス会の責任で、イ エズス会共同体のメンバーが住んでいる同じ建物にある。
このセンターで活動するイエズス会の協働者は、ある人はフルタイムで、その他多くはパートタイムのボランティアである。彼らは、社会活動、ボーイ・ガー ルスカウトのリーダー、公共福祉、共同体作りについての経験豊かな人たちである。イエズス会員と信徒協働者は、若者のために次のような活動をしている。教 えること、カウンセリング、社会見学、スカウトのキャンプ、環境意識など。そして、各活動間の協力体制を強める研究プロジェクトを始めている。イエズス会 人権連帯研究センターは、このプロジェクトのため、専門的な支援をしている。
【3】平和の島としての済州島
イエズス会員数人は、韓国の州である済州島の海軍基地建設反対闘争の真っただ中に身をおいている。闘争のポイントは次のようなものである。計画されてい るこの基地は、本当に必要なのか? 済州島(「平和島」と呼ばれ、観光地)に害をもたらさないか? 北東アジアにおいて軍事的緊張を高めないか? 政府 は、その土地の人達の反対を無視しても良いのか? そして、この建設はかけがえのない環境の宝を壊さないか? この建設に、身体を張って反対したイエズス 会員数人は、何度か逮捕された。
この計画に反対する済州教区ピーター カン司教や、市民、平和活動家をフルタイムでサポートするために、3人のイエズス会員は、それまでの司牧活動を中 止する許可を、管区長からもらった。2007年に市民は、この建設に圧倒的に反対した。しかし今の政府は、警察の強制力を使って、一方的かつ一貫して、自 らのプロジェクトを推し進めてきた。
カン司教は、市民が2007年にこの計画に反対したときに、その運動に加わった。済州島は、その自然の美しさのゆえによく知られている。そして、韓国政府 は、「平和」という名前を使って、観光を促進してきた。島の南の海岸に位置するこの海軍基地は、必要なく、東シナ海における軍事的緊張を高めるに違いな い。済州島は平和の島として保持すべきである。
イエズス会員は、市民や平和活動家と一緒に、何度も逮捕された。彼らは、営業妨害あるいは、所有権侵害で告訴された。ほとんどの場合には、令状がなかっ たので、彼らは法律によって認められている期間、拘留されただけである。しかし、3月9日に、警察は、ヨセフ キム チョンウク神父を逮捕し、令状が出さ れた。彼は、4月4日の裁判まで拘置された。裁判所は、2年間の執行猶予付きで、禁固8ヶ月と罰金10万ウォンの判決を下した。今は、釈放されて自由の身 となり、明るく微笑みの表情を浮かべている。闘争に関わったすべてのイエズス会員は、キリストと苦しみをともにした体験として受け止め、喜びを感じている。
外国人移民労働者3人の誕生日祝い