安藤 勇 SJ(イエズス会社会司牧センター)
今年の1月に始まった当センターの最新活動分野を紹介します。
普段、私たちは電車、職場、学校や教会などで日本に移住してきた様々な国籍の外国人に出会う機会がたくさんあります。たとえば日本のカトリック教会の場 合、信徒の大部分は様々な国から来日し、彼らは長く日本に住んで、日曜日に私たちの教会でいっぱいに占めています。この移住者と付き合っている人なら、彼 らが日本で直面している状況の複雑さや日本語の訓練の必要性、あるいは解決しにくい法律の障害を抱えていることに気づいているでしょう。
社会司牧センターが四ツ谷駅の近くにある岐部ホールに引っ越した時に、イエズス会管区本部から与えられた一つの使命は、聖イグナチオ教会との協力を探っ て、その関係を強めることでした。つまり、教会を訪れる一部の方々は、直面している問題を自分の力だけではどう解決するのか分からないからです。社会司牧 センターは特に、弱い立場に置かれている難民や多くの外国籍の労働者、あるいは母子家庭の母親たちなどの、主な問題の根本的な解決を探ってみようと色々な 方法を考えました。その結論は、法律相談を設けることでした。そして、弁護士のような法律専門家が必要になりました。
そのころ大手新聞で、東京弁護士会パブリック法律事務所において、外国人を対象にした法律支援の新しい部門ができたという報道を目にしました。記事によ ると、その担当者は、上智大学の卒業生で、鈴木雅子弁護士でした。そしてある日、家族と東京に暮らしている、シンガポール人のJessie T.さんが社会司牧センターに現れ、お手伝いしたいと申し出たわけです。そこで、センターで法律相談を始めようと思い、鈴木弁護士と連絡を取りながら計画 を進めました。その後、東京パブリック法律事務所へ足を運んで、センターとの協力に関心を示した3人の弁護士と交渉し、月1回、センターで無料法律相談を 行うことになって、今年の1月に相談はスタートを切りました。
ところが、弁護士との相談の時間は限られているために、事前にゆっくりと自由に面会を行う必要性を感じ、弁護士に会う前に法律相談を申し込んだ一人一人を呼び出して、本人たちが抱えている主な問題を絞ることにしました。弁護士にはじめて会う人がほとんどで、日本語も英語も通じない方には、通訳を付けなければなりません。センターでは6つの言語で対応しています。現在、すでに解決されたケースあるいはまだ法律的な解決を待っているケースが35件、私たちのファイルに記録されています。 いくつかの事例を紹介します。
1.ANGIさん(仮名)は数ヶ月前、入管の収容所からセンターに電話をか けました。彼女は小さい子ども3人を抱えるシングルマザーのフィリピン人でした。日本生まれの子どもたちは1歳、2歳、4歳で、8ヶ月間も母親から離さ れ、児童施設に収容されました。日本の滞在許可が切れて、今年1月に逮捕され、品川にある入管の収容所に入れられました。彼女にはお金がなくて、私たちは 面会に行く度に支援をしたこともあり、弁護士と共に収容所で会ったこともありました。結局、6月に子どもと共に強制送還されました。
2.ANGELさん(仮名、フィリピン人)は法律相談のために、最近訪ねて きました。週末2日間パブでまじめに働いていましたが、2ヶ月も賃金をもらえませんでした。本人は7月の無料法律相談に来て、弁護士のアドバイスに従っ て、労働基準監督署の力を求めました。けれども、監督署が介入したにもかかわらず、経営者からの反応は何もありませんでした。結局、今月の末、裁判になり ました。私たちは通訳を提供しています。
3.NGUYENさん(仮名、ベトナム人)は難民だと主張して、難民の承認 を受けるために日本政府に訴えてきました。法務省は3回ほどその訴えを退けたので、2011年8月に法律支援を求めて社会司牧センターで相談を受けまし た。私たちと関わりのある弁護士一人が彼を世話しています。ベトナム語と英語の書類が多く、センターで日本語に訳しています。