東アジアの移住
安藤 勇 SJ
イエズス会社会司牧センタースタッフ
移住という現象は、現代では2億人以上の人々に関わる、世界的な人口移動です。1970年代に湾岸諸国で起きた石油ブームは、多くのアジア諸国で労働者たちが活発に移住するきっかけとなりました。絶対数として、中国、バングラデシュ、およびインドは、世界でもトップ10に入る移住国であると思われます。東アジアのフィリピンは約350万人もの移住者を抱えており、地域の中や外に移動する移住者にとって、今なお重要な起源国です(図1)。
世界のトップ10の移住回廊地帯のうち、4つはアジア諸国に存在します。2005年には350万人もの移住者がバングラデシュ-インド間を利用しました。インド-アラブ首長国連邦間では220万人、フィリピン-アメリカ合衆国間では160万人です(世界銀行、2008年)。非合法移住はアジア地域の中でますます問題になってきています。バングラデシュ-インド間だけでも、約1700万人もの人々が関係していると思われます(図2)。
教皇フランシスコの世界難民移住移動者の日メッセージ
2014年1月19日、世界難民移住移動者の日にあたって出されたメッセージの中で、教皇フランシスコはこう述べました。「私たちの社会は、これまでにない形で、世界規模で相互に依存し、関わり合っています」。
「私は今年の世界難民移住移動者の日のテーマを『移住者と難民、よりよい世界へ』としました」。「『よりよい世界』を築くとは何を意味するのでしょうか。このことばは、個人や家族の全面的な真の発展を求めること、そして創造物という神のたまものが確かに尊重され、守られ、育まれるようにすることを目標としています」。「教皇パウロ6世は、現代の人々の願望を次のように説明しました。『より大きな存在になるために、より多くのことを行い、知識を深め、より多くを所有すること』」。
(回勅『ポプロールム・プログレシオ』6)
「人間への配慮が最優先され、霊的側面を含むあらゆる次元で人間が全面的に高められ、貧しい人、病者、囚人、困窮者、移住移動者を含むあらゆる人がないがしろにされることのないときこそ、よりよい世界が訪れるのです」。
「現代における移住の流れは、民族移動ではないとしても、人々の移動としては史上最大です。教会は、旅をし続ける移住者と難民に付き添うにあたり、移住の原因を理解するよう努めると同時に、移住がもたらすよくない影響を克服するために活動しています」。
「私たちは、様々な形で貧困が生じているというスキャンダルを見過ごすわけにはいきません。移住と貧困は結びついているのです。何百万もの人々がよりよい未来への希望を抱きつつ、または自分のいのちをひたすら守るために、貧困や迫害から逃れて移住することを選択しています。移住には、新しく、適切かつ有効な手段で取り組み、対処しなければなりません。そのためには、心からの連帯と思いやりの精神が求められます。教皇ベネディクト16世は次のように説明しています。『このような政策は、移民の本国と目的国との緊密な協調から出発すべきです』(回勅『真理に根ざした愛』62)。こうした協力関係は、各国が国内の経済や社会状況、雇用機会を改善させる尽力から始まることを強調すべきです。
(回勅『真理に根ざした愛』62)
「正しい情報を得、先入観を克服し、移住者や難民に対する態度を変える必要があります。人間の尊厳は、人は神の姿にかたどり、神に似せて造られたまさに神の子であるという事実に根ざしています」。
(教皇フランシスコのメッセージからの抜粋)
JCAP地域のイエズス会員と移住
2009年のはじめ、アジア太平洋地域のイエズス会管区長会議(JCAP)は社会問題の地図作成を始めました。それはイエズス会員とその協働者が現在携わっている社会的関心を評価するため、そして国際協力の可能性を探るために始められました。「ソーシャル・マッピング・レポート」の最終結果からは、イエズス会員とその協働者が、アジア太平洋地域における社会的課題に広範囲に取り組んでいるということが明らかでした。
アジア太平洋地域の現状は、より合理的な戦略と、地域のイエズス会管区間のさらなる協力を必要としています。弱い立場に置かれた移住者の数、不平等な経済発展、軽んじられた人々への脅威、根深い対立、環境の不正、それらはますます増え続け、地域の緊急の課題となっています。そしてそれらは、イエズス会員とその協働者により大きな役割を要求しています。
事実として、「移住」と「環境保護および天然資源の統治」はアジア太平洋地域のすべての国に関わる、使徒的最優先分野であるとみなされています。しかしながら、それが有効であるためには、社会正義に関するイエズス会の取り組みを見直し続け、派遣の使命を帯びた国際共同体を築いていく協力的努力が必要です。実際に、貧しい人に付き添うことや社会正義に対して、イエズス会員の取り組みは不十分であったと思われます。その他の弱点も「ソーシャル・マッピング・レポート」によって明らかにされました。様々な使徒職の間、特に社会使徒職や知性使徒職といった分野の間で連携が不足していました。
アジア太平洋地域では、祖国の外で不安定に暮らしている人々の尊厳や人権は十分に尊重されていません。それには難民、国内避難民、非合法滞在者、移住労働者、人身売買の被害者など、すべての弱い立場の人々が含まれます。
35年前に設立されたイエズス会難民サービス(JRS)は現在、強制的に追放された人々に注目しています。国際イグナチオ・アドボカシー・ネットワークは移住を重要な焦点のひとつとみなしています。さらにJCAPは、2009年8月、アジア太平洋地域における行動と連帯のための最重要課題として移住問題を選びました。日本では、イエズス会社会司牧センターを通じて、いくつかの仕事が移住労働者と共に行われています。韓国ではイエズス会移住者センターによって、台湾ではレールム・ノヴァールム・センターによって、そしてインドネシアではサハバト・インサンによって活動が行われています。フィリピンではUGAT機関が、移住労働者の残された家族と共に働いています。
通常提供される直接のサービスには、教育プログラム、法的援助、司牧活動および共同体形成、労働問題に関するサポート、避難所、あるいは物的支援などが含まれています。移住者にとって、職場での怪我、雇用者からの酷使や不公平な待遇への支援が、一般的にもっとも必要とされます。
発展途上地域を見ると、自然災害、あるいは人災によって移住を余儀なくされるケースが、アジア太平洋地域に共通してますます増えてきているようです。増え続けている移住配偶者という現象もまた、関心の領域です。
アジア太平洋地域にいる移住労働者、あるいはアジア太平洋地域からの移住労働者は、著しく大きなグループを形成しています。そのため、労働者を送る国と受け入れる国との間で、相互の努力がより一層必要とされています。組織化された情報と経験のやり取りは、イエズス会の結びつきを超えて、ネットワークを確実に改善し、発展させることができるでしょう。
移住の問題は、貧困、人権、開発援助、環境保護、自然災害、平和構築そして紛争解決といった幅広い領域と、強く結びついています。
2009年以降の具体的歩み
2010年8月、東アジアと太平洋地域のほとんどの管区を代表するイエズス会員の特別な集会が、インドネシアのクラテンで行われました。移住への焦点は、議論の主要な成果のひとつでした。アジア太平洋地域の移住という共通分野で、すべてのイエズス会使徒職が支持と取り組みを探り、発進国と受け入れ国の間の協力を促進することが重要であると考えられました。
2010年10月、「世界移住フォーラム4」の前に、29か国を代表する94人がエクアドルのキートに集まり、世界的レベルで移住に関するイエズス会の使徒的ネットワークを形作るだけでなく、行動と方法の優先順位を明らかにしようと試みました。私たちJCAP地域からは、3人の代表を送りました。移住によって引き起こされる挑戦は、イエズス会全体にとって、使徒的優先事項です。
2011年5月、イエズス会員と協働者から成る小グループは、東アジアのいくつかの国で移住労働者と共に働き、ソウルにおいて特別なセミナーを開いて、情報とネットワーク計画を共有しました。
最近では、今年の6月に行われた、移住について働くイエズス会機関の代表者(ディレクター)の会議において、JCAP移住ネットワークは勢いがついたように見えます。会議の場所はインドネシアのジャカルタでした。イエズス会のベニー・ジュリアワン神父がアジア太平洋地域における移住者のためのネットワークの頼りになるコーディネーターとして任命されました。それによって地域の中に強い協力がついに作られるとグループには感じられました。
ジャカルタの会議において代表を務めた私たちの機関は主に、移住労働者と非合法滞在者を取り扱います。そしてこれらの主要なグループを中心にして、3年間(2014~2017年)の活動計画が入念に練られました。参加者間のひとつの大きな関心は、地域のいたるところにいる移住労働者のリクルートと就職あっせんに強く影響を与えている仲介システムに取り組む必要でした。
相互協力の新しい具体的プログラムは、3年の間、限られた研究助成金を支払うことです。そして、選ばれたトピックは次の三つです。(1)移住者の子どもの幸福、(2)移住者の帰還と再び自国に適応する策、(3)移住の仲介システム。
私はイエズス会社会司牧センターによって活発に支持されている二つの主要な発展をここに加えたいと思います。一つは、足立インターナショナル・アカデミー(AIA)が2007年に創立されたことです。ここでは東京の郊外に暮らす移住労働者やその子どもたちが、日本語や日本文化などの基礎的教育を受けています。それから3年後の2010年には、社会司牧センターは移民デスクをオープンしました。それは、弁護士と協力して、移住労働者が日々の暮らしの中で直面している法的問題に対処するためです。その他にも、当センターは移住の問題は重要であると確信して、アジア地域のすべてのネットワークを促進している他のグループとの協力のため、いつでも開かれています。
ケーススタディー:アジア太平洋地域の家事労働者
ベニー・ハリー・ジュリアワン SJによる『アジア太平洋地域の家事労働者の概要』(2013年)を、安藤勇SJが編集
アジアならびに太平洋地域には、およそ2150万人の家事労働者が暮らしています(国際労働機関ILO、2013年)。それは現代世界の全家事労働者の、実に約41パーセントを占めています。しかしながら、この地域の中でも最も人口の多い二つの国、つまりインドと中国のデータは特に信憑性が低いように思われます。上のデータで目立っていることのひとつは、1995年には1380万人だった家事労働者が最新のデータでは2150万人に増加していることです。アジア太平洋地域が家事労働者の最も大きな雇用主になっています。この増加は、地域が経済的にも、また社会的にも非常に活発であるということを物語っています。このレポートでは、アジア太平洋地域の状況について焦点を絞ります。
実際、2030年までに、アジア太平洋地域の中流階級はヨーロッパのほぼ5倍、北米の10倍になるだろうと推定されています(プライスウォーターハウスクーパーズPwC、2012年)。中流階級の購買力は、家事労働者の需要をあおります。今日では多くの家庭がメイド、ベビーシッター、看護師、運転手、庭師を雇う余裕があります。しかしながらこれらの職業はアジアの発展した地域においては地元住民に敬遠されます。なぜならそれらは「三つのD」、すなわち汚い(dirty)、きつい(difficult)、危険な(dangerous)仕事だと思われているからです。地元住民に代わって、家事労働者はアジアの貧しい予備人員から成り立っています。アジアではおよそ18億人(総人口の54パーセント)もの人々が、一日2米ドル以下で生活しています(国際連合人間移住計画UN Habitat、2010年)。先進国では、家事労働者は発展途上の隣国出身者です。台湾は2012年に20万人の外国人家事労働者を雇いました。同年、香港は30万人です。韓国は16万3千人(2008年)、シンガポールは16万人(2013年)、マレーシアは30万人(2006年)です。これらの労働者の多くは、インドネシア、フィリピン、ベトナムから来ています。日本では、外国人家事労働者は日本人家庭のためではなく、ただ外国人家庭のためにのみ許されています。
アジア太平洋地域は急速な都市化を経験しています。アジアの人口比は、1990年には世界の31.5パーセントでしたが、2010年には42.2パーセントにまで上昇しています(UN Habitat、2010年)。そのような都市環境の中で、家事労働者は農村からの移住者で成り立っています。彼らは正規の経済の中に仕事を見つけることができず、その代わりに都市の労働の予備軍の一部となっているのです。そうして現在、彼らはアジアの都市に5億550万人ものスラム住人を生み出しているのです。
要するに、アジア太平洋地域の家事労働は、移住によってかなり特徴づけられているのです。その移住は、国境を越えるもの、あるいは農村-都市間の境界を越えるもの、どちらも含みます。これらの労働者は主に、先進国では労働力不足を補い、都市部では増大する家事労働者への需要を満たします。
偏見の壁
このレポートの冒頭で述べたように、家事労働はしばしば公的な統計には記載されません。この事実は、この種の仕事の弱み、特に法的な承認や保護の観点からの弱点を反映しています。先進国では、低い技能しか有しない移住家事労働者は、「臨時雇い」と呼ばれる体制を前提として、補助的労働力とみなされます。それが意味することは、移住労働者の存在は一般に臨時的であるとみなされ、彼らは市民、あるいは永住者となるために適格な権利も蓄えも有していません。
韓国は家事労働を職であるとすら認めていません。したがって外国人家事労働者は法律によって認められた規定からも除外されています。実際、アジア太平洋地域の全家事労働者のうち、61パーセントが国の労働基準法によって保護されていません(ILO、2013年)。香港ではすべての労働者の平等が認められているので、この件に関しては例外です。彼らは地元の労働者として、労働者の法的な権利と福祉を享受することを許されています。移住家事労働者は、もし新しい雇用主を見つけることができないのなら、雇用契約が切れてから2週間以内に国外へ去らなければなりません。まさしく、臨時雇いという制度は、短い、もしくは一定の期限付きの雇用契約、労働法からの排除においてはっきりと現れています。
臨時雇いはまた、本国と目的国、どちらにおいても支配人や仲介業者の手の中でもてあそばれます。多くの報告書が、移住労働者が悪徳支配人や密入国あっせん業者によって搾取されていることを指摘しています。このような非人道的な活動の根本原因は、雇用プロセスの複雑さの中に見出せます。国境を越えて労働者を募集し就職させることは、事務処理と官僚制度に関するある程度の知識と経験を必要とします。この二つの性質は、しばしば想定される移住者に欠けているものです。短期雇用契約は長時間労働を伴う家事使用人の範囲をしばしば超えて、新しい職を探し続けるということを意味します。したがって、彼らが支配人を頼るほかはないというのは、ほとんど自明なのです。それに加えて、本国の多くは移住労働者が外国に移住することを活発に推奨しますが、この役目から身を引いて、支配人に任せっきりなのです。
アジアの発展途上国では、家事労働者の供給は長い間大家族のネットワークに頼っていました。それ以外というのは、正式な雇用体系の外だったのです。
労働者あっせん所と市民社会
しかし、アジア太平洋地域の家事労働者はただただ無力な犠牲者であるという表現は、果たして現状を適切に表しているでしょうか。いいえ、違います。アジアの先進国における外国人家事労働者、あるいは移住家事労働者はいつも従順でおとなしかったわけではありません。彼らは可能な限りで、組合を組織し始めました。その最も成功した例は、香港に見られます。例えば、インドネシア移住労働者連盟(IMWU)、インドネシア移民労働者協会(ATKI)、Unifil(在香港フィリピン人連合)などには多くのメンバーが属しており、政治活動にも熱心です(Constable、2009年)。彼らはよりよい給料や労働条件、グローバル化など、社会正義のためのキャンペーンの中で、地元の組合やNGOと縁組します。
この話のもうひとつの側面は、多くの女性家事労働者が経験する社会的、広範な移動性です。家事労働は長い間、家庭の義務の一部であり、この義務のほとんどを女性が負っています。増大する繁栄は、自分の家における家事が今や他の誰かの家における有給の家事労働へと変化していることを意味します。女性は自らの家事を市場に売ります。それが都市部の、あるいは国外の家庭であったとしてもです。「故郷の主婦は家事を海外ですることによって、大黒柱となるのです」。
いくつかの国では、とりわけフィリピン、香港、台湾などでは、家事労働の課題に対する教会の対応が高く評価されています。アジア太平洋地域の修道会は、反人身売買というわずかに広いテーマのもとではありますが、家事労働者の苦しみに注意を払ってきました。
カトリック 世界のニュース(178)
村山 兵衛 SJ(神学生)
国連人権委、日本にヘイトスピーチ取締まりを促す
7/25, The Japan Times:国連人権委員会は7月24日、人種的優越や憎悪を呼びかけるすべての宣伝活動の禁止、および加害者への処罰を各国政府に呼びかけた。報告書の中で委員会は日本について、朝鮮・韓国人を含む国内少数派に対するヘイトスピーチなどの「広範囲にわたる人種差別的言説に対する懸念」を表明した。委員会は、「差別、敵意、暴力への扇動をかき立てるすべての宣伝を禁止し」、「容疑のかかる加害者を徹底的な調査のうえで起訴し、有罪と判明すれば適切な制裁をもって処罰する」よう日本政府に促す。国連はさらに、第二次世界大戦中に朝鮮・韓国などのアジア諸国の女性に性的奴隷行為を強制したことへの責任追及を全面的に受け入れるよう、日本に求めている。
教皇フランシスコ、中東、イラク、ウクライナの平和を呼びかける
7/27, Jewish Telegraphic Agency:教皇フランシスコは7月27日、中東、イラク、ウクライナの平和を訴えた。教皇は翌日が第一次世界大戦の勃発100年目を迎えることを思い起こして、中東、イラク、ウクライナの「諸民族や指導者」に、神が「平和への道を決然と歩み、一つひとつの争いに対話・交渉への粘り強い努力と和解の力をもって向き合うための知恵と力を」与えてくだるようにと祈った。この知恵と力は、「特定の利益ではなく、共通善と一人ひとりのひとに対する尊重 に基づく」ものである。
同じ頃、国際カリタスは、ガザ(パレスチナ)の人々への緊急支援の呼びかけを発表した。150万ドル規模に達する支援プログラムの第1弾として、カリタスによって4つの病院に、医療物資や医薬品と発電機のための燃料が提供される。また、2000家族分の食糧小包と、500家族分の毛布が支給される。
米国務省:2013年は信教の自由にとって暗黒の年
7/29, Vatican Radio:信教の自由に関する米国務省2014年報告書は、広範囲におよぶ宗教的差別と宗教的少数派の国内難民化の事例によって、昨年が暗黒の一年であったと述べる。「地球上のほぼいたるところで、おびただしいキリスト者、イスラム教徒、ヒンズー教徒などの信仰者が、自分の信仰のゆえに家から強制的に追い出された。 …各地の宗教共同体は自らの伝統的・歴史的な住処から消滅しつつあり、地理的にも分散しつつある」。暴力、差別、嫌がらせを被りやすく、実際にこれらによく直面している宗教的共同体を保護しきれていない国として、報告書はシリア、スリランカ、エジプト、イラク、バングラデシュ、インドネシア、インド、中央アフリカ、ミャンマー、中国、ナイジェリアなどの国名を挙げている。
ベナン:親に奴隷として30 ユーロで売られる子どもたち――人身売買反対運動
7/27, Agenzia Fides:アフリカ・ベナンのサレジオ修道会員が後援する「わたしは売り物じゃない」運動は、人身売買から子どもを守るために訴える――「貧困と家族の崩壊は、疑いなく子どもの人身売買の主要二原因です。これにはさらに、子どもたちと家族の教育の欠如、とくにアフリカ、アジア諸国における紛争や政治的不安定、また家族の抱える累積負債や人身売買業者が罰を受けないことなどが原因として加えられなければなりません」。ベナン第二の都市ポルト・ノボのドンボスコ・レセプションセンター所長、ゴメス神父(サレジオ会)は「私たちは親が約30 ユーロで売った子どもたちを迎え入れています…」と語る。
不法な養子縁組、強制結婚、臓器売買の例を除いても、全世界で100 万人以上の子どもたちが、人身売買の犠牲者となっている。国連の統計によると、全人身売買犠牲者の27%が子どもであると確認されている。
中央アフリカ共和国:混乱の中での子どものための安全なスペース
6/25, JRS News:イエズス会難民サービス(JRS) は、戦闘で壊滅状態となった町バンギ(中央アフリカ)の国内避難民地帯で暮らす子どもたちのために、安全なスペースを立ち上げている。中央アフリカ共和国は、反政府勢力Seleka が2013 年3 月バンギに侵攻して以来、分断状態となったままである。イスラム教徒を中心とする同反政府勢力は、F・ボジゼ大統領を追放後、広範囲にわたる人権侵害、破壊、略奪行為を行なってきた。キリスト者民兵組織anti-Balaka がこれに応酬し、以来民間人は、全国規模で起こっている暴力の応酬合戦に巻き込まれている。 しかし今年6 月、JRS は大規模な政情不安にもかかわらず、子どもたちが学校に戻って、中断した年間カリキュラムを最後までやり遂げることを目指すプロジェクトを26 の学校で立ち上げた。危険と飢餓のせいで両親が子どもを学校に送りだせなかった事情があったので、学校給食がこのプロジェクトの「呼びもの」となった。
イエズス会社会司牧センターの移民デスク
田山 ジェシー
移民デスク(イエズス会社会司牧センター)
尊敬すべき読者の皆さまに心より挨拶を送ります。私たちの通信をご購読いただき、誠にありがとうございます。
私は田山ジェシーと申します。シンガポール出身です。日本人の夫と結婚し、神様のお恵みによって、現在17歳になる可愛い娘も授かりました。今から18年前の1996年7月、私は東京にやって来ました。シンガポールにいた時、私はいくつかの日本企業で働いていました。その中で日本の習慣を知り、日本語も多少わかるようになりました。そのため、はじめのうちは、私はすべてが順調にいくと思っていました。けれども日本に着いたとき、夫の大きな支えはあったものの、カルチャーショックや言葉の壁という、私が予想していたものとはまったく異なる現実に直面しました。
2010年10月、私はイエズス会社会司牧センターの移民デスクスタッフに加わりました。移民デスクは、このセンターの最も新しいプロジェクトのひとつで、現在開設から4年近くになります。これは今まで私が日本で働いた中でも、最もやりがいのある、そして価値のあるボランティアです。私はそれまで、日本で様々なボランティアをしてきました。例えば、耳の不自由な方々とコミュニケーションを取れるように、日本の手話を3年間学んでいました。また、ホームレスの街である山谷のマザーテレサホームでも、ボランティアとして3年間働いていました。しかしこれらのボランティアは、今私がしていることほど人々の暮らしや心に触れ、理解を深めるものではありませんでした。
移民デスクでは、外国人のために無料法律相談を提供しています。相談内容にはビザ、法的身分、国際結婚、家庭の事情、離婚、家庭内暴力(DV)、雇用、労働災害、交通事故、裁判、そして外国人に関するその他の法律問題が含まれています。申請者は30分間の無料相談を受けることができ、弁護士の費用はセンターが支払います。
弁護士と会う前に、まず安藤神父(移民デスク担当)と私が申請者のインタビューを行います。インタビューをするのは、事情をまとめて、焦点を絞るためです。インタビューをすることによって、申請者が法律相談をする必要があるのかないのか、あるいはもしかしたら他の場所を紹介した方が適切なのではないか、といったことがわかってきます。もし弁護士の相談を必要とするならば、インタビューの間に書き留められた内容のコピーが、弁護士へと渡されます。私たちの弁護士は、毎月第4月曜日にセンターに来て、午後1時から4時までいます。インタビューのために、申請者は外国人カードか住民票、パスポート、あるいはその他の適切な書類を持参する必要があります。それによって申請者をチェックし、彼らの身分を確認するためです。
2012年7月、フランシスカン・チャペル・センター(FCC)との協力が始まり、無料法律相談がFCCの建物でも、毎月第1日曜日の午前11時から午後3時まで受けられるようになりました。フランシスコ会のラッセル・ベッカー神父(FCCの主任司祭)は、信徒にとって何がベストなのかを常に考えている、心の広い司祭です。そして私たちを、彼らのパストラルケアサービスの一部として歓迎してくれています。私たちは信徒の方からも、あるいは外部の方からも、貴重な意見をいただくことができました。彼らはこう言ってくれました。「日曜日に人々のためにそのようなサービスを提供する教会を持つことができるなんて、なんて素晴らしいことでしょう」。
イエズス会社会司牧センターは、聖イグナチオ教会のすぐ隣にあります。ここも同様に、毎月第3日曜日の午前10時から午後1時までの間、無料法律相談のために開かれています。
正式には、私は毎週月曜日と金曜日に出勤しています。けれども何らかの必要があるときには、他の週日や週末であってもオフィスに来ますし、あるいは別の場所へ出向いていくこともあります。私は品川入国者収容所を訪れ、移民の方々が入国管理局、裁判所、役所などに行く際に付き添います。時々、私は移民の方のお宅を訪れたり、場合によっては彼らと一緒に外食をしたりします。
私は、2013年の10月にジェラルド・バリー神父が私に言った最後の言葉を覚えています。移民デスクで彼はこう言いました。「善い働きを続けてください」。バリー神父が昨年の12月27日に他界するまで、私は聖イグナチオ教会で数年間一緒に働いていました。彼はその時点で末期的な病気であったにもかかわらず、移民に対して大きな関心を示し、彼らを助けるためのありとあらゆる方法を試みました。バリー神父は13年間、府中刑務所のチャプレンをしていました。刑務所で男性外国人受刑者のためにミサをささげ、彼らの相談にも乗っていました。バリー神父は非常に心の優しい人で、彼に近づく人々のために、自分のできるすべてのことをしていました。
日本で暮らす移民としての私自身の個人的な経験から、日本語にあまり堪能ではない人々にとって、日本での生活は過酷なものだと思います。特に言葉の壁によって、法的な援助やアドバイスを得たい、あるいは単に意見を分かち合いたい時ですら、一体誰に頼ればいいのかわからないのです。時に状況が私たちの能力のはるかかなたであっても、移民デスクが開かれ、そこで小さな救いの手を差しのべることができることに、私は幸せを感じています。