安倍首相の緊急臨時会見(2014年4月1日)
光延一郎
先日、以下のようなニュースが流れましたが、みなさまはお気づきでしたでしょうか?以下、ニュースです…。
「本日未明、従来の政治方針を抜本的に改革する閣議決定がなされました。つきましては誠に突然ではありますが、ただいまより国民の皆様へ重大発表がございます。
まず、本日付をもって実施を予定されておりました消費税率8%を急きょとり止めることを決定いたしました。またこれは従来の5%に据え置きされるのではなく、消費税そのものを廃止するという方針であります。
そのための財源確保として自衛隊の陸・海・空軍の軍事予算を大幅に削減し、福祉・教育・年金予算等に回すことも同時に決定いたしました。
これらの措置で生じる防衛上の不安を払拭するために、中韓ならびにアジア近隣諸国との友好親善をはかりたいと考えております。まず「河野談話」を踏襲し、近年の誤った歴史認識を改め、真摯な反省を内外に表明し、ついでアジア不戦中立条約を宣言いたします。
これと同時に従来唱えておりました集団的自衛権の主張を放棄します。この行使は日本の自衛隊がアメリカ軍の傭兵部隊になり、アメリカの戦争に巻き込まれることは多くのご指摘通りございます。やや遅ればせではありますが、日本国憲法の9条に明確に違反するとの認識に至りました。
これに伴い戦争準備のために、昨年暮れに強行採決した秘密保護法も反古といたします。同時に、「日本をとりもどす」というわが党のスローガンついてですが、「戦前の日本をとりもどす」という意味で唱えておりました。しかし、これからは「アメリカから日本をとりもどす」という趣旨に変え、沖縄をふくむ国内のすべての基地を撤去させ、主権と国土をとりもどしたいと考えております。
私はまたこの場を借りて、オリンピック招致のために世界にむかって、福島原発はアンダー・コントロールされているなどと大嘘を吐いたことを深く謝罪したいと思います。ご存知の通り、福島第一原発はまったく収拾不可能の状態であります。またこんな危険なものは国内に置けないから外国に売り飛ばそうとしたことを我ながら恥ずかしく思う次第でもあります。
私は従来の原発推進・再稼働・海外輸出の立場を断念し、小泉・細川両先輩に倣って、ここにはっきりと脱原発宣言いたします。
同時に今までのお坊ちゃま体質を脱して、お友達人事ともきっぱり決別いたします。目つきの悪い軍事おたくや口のひん曲がったナチス礼賛者とも絶交いたします。内閣法制局長官には即刻入院加療していただき、NHK経営委員全員の辞表を預かっている委員長に辞表を提出させる考えでございます。
私は日本の民主主義・平和・人権を尊重して、日本国民から愛され、世界から尊敬されるような国にしたい。そして、名宰相として歴史に残る政治家になりたいとここに一念発起したのであります。 以上、何かご質問がございましたら。
はい、どうぞ。なぜこのような重大な歴史的転換を急に決意したのかという、ことですか。
それはきわめて簡単な理由からです。今日は4月1日だからです!?」
…つまり、「エイプリルフール」だったわけでした。しかし、笑っている場合ではないですね。この通りに現政権が政治を行っているならどんなに良いでしょう? それがまったく逆向きなのは、いったいどうしてなのでしょう?
以上は、牧子嘉丸(まきこ・よしまる)さんの「ショート・ワールド」よりでした。
「レー バ ー ・ ネ ッ ト 」 と い う ネ ッ ト ・ ニ ュ ー ス に 掲 載 さ れ た も の で し た。
(http://www.labornetjp.org/news/2014/0401makiko)。
*漫画=壱花花
〔著者紹介〕 牧子嘉丸(まきこ・よしまる)
「泥濘ー冬の日の森鴎外」で上林暁賞受賞。ラフカデイオ・ハーンの晩年を描いた「海の挽歌」や上田秋成の生涯をもの語る「秋成幻談」でコスモス文学賞受賞。以上は著作「海の挽歌」(彼方社)に所収。また昭和最後の日に大杉栄の亡霊とともに反逆する魂を描いた「曇天」などを収めた幻の異色短編集「花づな」(彼方社)がある。レイバーネットの連載・掌編小説「ショート・ワールド」では、「ショートであっても世界を描きたい」と意欲満々だ。月 1 回程度を予定